
相続した実家が遠くにあって、契約のたびに何度も帰省するのは体力的にも大変。



兄弟みんなで相続したけれど、全員で集まって契約するのは難しい。
こうしたお悩みの答えが「委任状」です。
委任状を使えば、信頼できる人に売却の手続きをお願いでき、自分が現地に行けなくても不動産売却を進められます。
この記事では、宅地建物取引士として売買の現場に携わってきた筆者が、委任状の書き方・必要書類・つまずきやすい注意点を、わかりやすくご案内します。
読み終えるころには、「自分の場合はこう動けばいい」という最初の一歩が見えてくるはずです。
不動産売却の委任状で「行けない・集まれない」が解決する理由


結論からお伝えすると、不動産売却の委任状とは、土地や建物を売る手続きを自分の代わりに信頼できる人へお願いするための書類です。
これがあれば、本人が契約や決済の場に立ち会えなくても、売却を最後まで進められます。
不動産売却の委任状とは、売主本人が「この人に、この不動産を売る手続きを任せます」と書面で示し、代理人にその権限を与える書類のことです。
ここで言う「代理人(受任者)」とは、本人の代わりに契約などを行う人のことで、家族や親族、あるいは司法書士などの専門家がなることもあります。
代理人が委任状にもとづいて行った契約は、本人が自分で行ったのとまったく同じ効果を持ちます。
これは民法が定める「代理」という仕組みにもとづくもので、きちんとした委任状があれば、法律上しっかり効力が認められます。



筆者は宅地建物取引士として、また相続診断士として、相続にともなう不動産の売却を数多くお手伝いしてきました。
その相談現場では、「遠方に住んでいて手続きに行けない」「相続した兄弟が集まれない」といった理由から、委任状を上手に活用して売却を進める方を本当によく見かけます。
難しそうに思える書類ですが、ポイントを押さえれば決して怖いものではありません。
委任状が役立つのは、こんな3つの場面です
委任状がもっとも力を発揮するのは、「本人が手続きの場に立ち会えない・集まれない」という場面です。
なぜなら、不動産の売買契約や代金の受け渡し(決済)は、原則として所有者本人が立ち会う前提で進むからです。
しかし、以下の場面で委任状を使えば、所有者本人が立ち合いをしなくても売却できます。
- 売りたい不動産が遠方にある
たとえば、地方の実家を相続したけれど自分は都市部に住んでいる、というケースです。
契約や決済のたびに長距離を移動するのは、時間も交通費も負担になります。 - 共有名義(複数人で一つの不動産を所有している状態)の売却
相続で兄弟姉妹が共同で実家を引き継いだ場合などがこれにあたります。
本来は共有者全員が契約の場に集まる必要がありますが、全員の予定を合わせるのは簡単ではありません。
そこで、一人を代表者に決めて、ほかの共有者が委任状を渡す形がよく使われます。 - 仕事や体調の都合で時間が取れない
平日に何度も足を運ぶのが難しい方や、入院・療養中の方でも、委任状によって手続きを前に進められます。
まずは「悩み別」に方向性を整理しましょう
ご自身がどのタイプかによって、最初に確認すべきことが変わります。
- 相続した不動産を売りたい方
まず名義が誰になっているか(相続登記が済んでいるか)の確認が出発点です。 - 遠方の不動産を売りたい方
誰に代理人を頼めるかを考えるところから始めます。 - 共有名義の方
ほかの共有者と「売る・売らない」の合意を取ることが先決です。



いずれの場合も、委任状は「本人の意思をきちんと書面に残す」ことが何より大切です。
後ほど、それぞれの具体的な進め方を順番に解説していきます。
公的データで見る、いま不動産売却を考える人が増えている背景


最初に押さえておきたいのは、「不動産を売る人」と「委任状が必要になる人」が、いまの日本でどんどん増えているという事実です。
地価の上昇、空き家の急増、相続をめぐる法律の変化という3つの数字が、その流れをはっきり示しています。
地価はバブル後で最大の上昇、「売り時」を逃さない視点
まず知っておきたいのは、土地の値段がここ数年上がり続けているという事実です。
つまり、売却を考えているなら、いまは前向きに検討する価値があるタイミングだということです。
国土交通省の「令和7年地価公示」(2025年3月公表)によると、2025年1月1日時点の全国の土地の値段は、すべての用途を平均すると前の年より2.7%上がりました。
これは1992年以降、つまりバブル崩壊後で最も大きな伸び率で、4年連続の上昇です。


数字だけ聞いてもピンとこないかもしれません。たとえば、ご自宅の近くで売りに出された物件のチラシを思い浮かべてください。
あのチラシの価格は、ここ数年で着実に上がっています。



「数年前に売ろうか迷ってやめた」という方ほど、いまの相場を一度確かめてみる価値があります。
値段が上がっているうちに動けば、それだけ手元に残る金額も大きくなります。
だからこそ、「売るかどうか」を決める前に、まず今の値段を知ることが、将来の安心につながる第一歩になります。
もうひとつ、価格の動きをはっきり示すデータがあります。
国土交通省の「不動産価格指数」(2025年12月公表・令和7年9月分)によると、マンション(区分所有)の価格指数は222.2となっています。
これは基準とする2010年(指数を100とした年)と比べて、価格がおよそ2倍に上がったことを意味します。


つまり、10年ほど前にマンションを買って今も持っている方なら、購入したときよりずっと高く売れる可能性が十分にあるということです。
相続したマンションについても同じことが言えます。



「もう古いから、たいした値段にはならないだろう」と決めつけず、まずは今いくらで売れそうかを確かめることが、損をしないための出発点になります。
価格を調べるだけなら、おおよその相場を示す地価公示と、種類別の動きを示すこの不動産価格指数の両方を、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で無料で確認できます。
ただし、上昇しているのは都市部や人気エリアが中心で、地方では横ばいや下落の地域もあります。
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だからこそ、「全国的に上がっているから自分の家も」と思い込まず、ご自身の不動産が建つエリアの値段を個別に確認することが大切だよ。
空き家は900万戸で過去最多、相続をきっかけに売る人が急増
次に注目したいのは、使われていない家が全国で過去最多になっているという事実です。
その多くは相続をきっかけに発生しており、遠方の相続不動産を売る人=委任状が必要になる人が増えている、という流れがここにあります。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(確報集計・2024年9月公表)によると、全国の空き家は900万2千戸と過去最多になりました。
空き家率は13.8%で、これも過去最高です。
空き家の数は1993年からの30年間でおよそ2倍に増えています。


900万戸と言われても規模が大きすぎて実感がわきにくいので、身近に置き換えてみましょう。
日本の家のおよそ7軒に1軒が空き家、という計算になります。



あなたの町内を歩いていて、雨戸が閉まったままの家、庭に草が伸びた家を見かけることはありませんか。その多くが、相続したものの住む予定がなく、放置されている家なのです。
同じ調査では、65歳以上の方がいる世帯が2375万世帯に達し、全世帯の42.7%を占めていることも分かっています。
つまり、これから相続によって実家を引き継ぐ場面は、誰にとっても他人事ではありません。
相続した実家が遠くにあり、相続人(財産を引き継ぐ人)が何人もいる——こうした状況こそ、委任状を使って一人が代表して売却を進める典型的なケースです。
国も空き家対策に力を入れています。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」にもとづき、窓や壁が傷んで管理が不十分な空き家は、市区町村から指導や勧告の対象になることがあります。


勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くしてくれる特例(住宅用地の特例)から外れ、かえって税の負担が重くなる場合もあるのです。



空き家を放置すると、固定資産税(土地や建物を持っているとかかる税金)の負担が続くうえ、草刈りや防犯といった管理の手間もかかります。
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早めに売却の方向で動くことが、こうした負担から解放される近道になるよ。


2024年4月の相続登記義務化で、「名義変更→売却」の流れが必須に
3つ目に押さえたいのが、相続した不動産には「名義を変える義務」ができたという最近の制度変更です。
売却の前提として名義変更が必要になり、その手続きでも委任状が登場する場面が増えています。
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。
これは「相続登記の義務化」と呼ばれる制度で、不動産登記法(不動産の権利関係を記録するルールを定めた法律)の第76条の2にもとづくものです。


このルールでは、不動産を相続したことを知った日から3年以内に名義変更をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料(行政上のペナルティとして支払うお金。同法第164条第1項に定められています)の対象になる可能性があります。
さらに、2024年4月より前に相続した古い不動産も対象で、2027年3月31日までに手続きをする必要があります。



「親が亡くなってから何年も名義をそのままにしている」という方は、ここが期限の目安になります。
なぜこの話が委任状と関係するのでしょうか。
それは、相続した不動産を売るには、まず名義を相続人に変えておくことが前提になるからです。
亡くなった方の名義のままでは売却できません。そして、相続人が遠方にいたり何人もいたりする場合、この名義変更や売却の手続きでも委任状が活躍します。
背景には、所有者が分からなくなった土地(所有者不明土地)が全国で増え、その原因の多くが相続登記をしていないことにあった、という社会問題があります。



だからこそ、相続したら早めに名義を整え、売却の方向性を決めておくことが、結果として自分や家族の負担を軽くすることにつながります。


【ひな形の考え方つき】不動産売却の委任状の書き方と進め方


ここからは、いよいよ実践編です。
結論として、委任状は決まった書式(フォーマット)がなく、必要な項目さえ正しく書けばパソコンでも手書きでも有効です。ただし、書き方をひとつ間違えるとトラブルのもとになるため、ポイントを押さえて作成することが大切です。
委任状に必ず書く項目と、コピペで使えるひな形の中身
まず、委任状に何を書けばよいかを整理します。なぜなら、項目の抜けや曖昧な表現が、後のトラブルにつながるからです。
委任状に決まった様式はありませんが、最低限、次の項目は必ず記載します。
- 本人(委任者)と代理人(受任者)の情報
それぞれの住所・氏名を、正確に記載します。
住民票や登記事項証明書(不動産の権利関係を証明する書類)と一致しているかを確認しましょう。 - 対象となる不動産の特定
登記事項証明書を見ながら、土地なら所在・地番、建物なら所在・家屋番号・構造・床面積を正確に書き写します。 - 委任する内容(権限の範囲)
たとえば「売買契約の締結に関する一切の件」「売買代金の受領に関する件」「所有権移転登記の申請に関する件」など、任せる行為を具体的に挙げます。 - 作成した日付と本人の署名・実印による押印
実際にひな形を使うときのコツは、「一切の件」という言葉を単独で使わないことです。
「不動産売却に関する一切の件」とだけ書くと、どこまで任せたのかが曖昧になり、代理人が想定外の行為をしてもチェックできません。
委任する行為は、ひとつずつ具体的に書き出し、最後に「以上」と記載して、書き足しを防ぐのが基本です。



こうした記載例(コピペして使えるテンプレート)は、依頼する不動産会社が用意してくれることも多いので、自己流で作る前に相談してみると安心です。
委任状とあわせて必要な書類と、準備にかかる時間・費用
委任状だけでは手続きは完結しません。
結論として、委任状には本人の実印を押し、印鑑証明書をセットで添付するのが必須です。これがそろって初めて、委任状は公的に通用する効力を持ちます。
なぜ実印と印鑑証明書が必要なのでしょうか。
それは、「この委任状を本当に本人が作ったのか」を証明するためです。
実印(市区町村に登録した印鑑)と、その印鑑が本物であることを示す印鑑証明書をそろえることで、なりすましや偽造を防ぎます。準備するものは、以下の書類です。
- 本人の実印
- 印鑑証明書
お住まいの市区町村の窓口やコンビニ(マイナンバーカードがあれば取得可能)で、1通あたり数百円で取れます。所要時間は窓口でも数十分ほどです。 - 本人確認書類(運転免許証など)
- 対象不動産の登記事項証明書
法務局の窓口のほか、オンラインサービスでも請求でき、手数料は500円前後です。パソコンやスマホから申請でき、届いた書類で土地の面積や建物の構造といった基本情報がひと目で分かります。 - 住所がつながらない場合は住民票
注意点として、印鑑証明書は発行から3か月以内のものを求められることが多いので、取得のタイミングは早すぎないようにしましょう。
また、代理人が手続きの場に出向く際には、代理人自身の本人確認書類(運転免許証など)も必要になります。
誰の、どの書類が要るのかは、依頼する不動産会社に一覧でもらっておくと、二度手間を防げます。



ここで多くの方が不安に感じるのが、「遠方に住んでいて、書類のために何度も役所や法務局に行けない」という点です。
最近は、こうした事情に配慮し、契約までの手続きをオンライン中心で進められる不動産会社も増えています。
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遠方の方や忙しい方でも、対面と組み合わせながら無理なく進められるから、「何度も出向くのは難しい」という方は、そうした対応が可能か最初に確認してみよう!


委任状を使った不動産売却の流れを、5ステップで
最後に、全体の流れをつかんでおきましょう。
結論として、委任状を使う売却は「代理人を決める→委任状を作る→媒介契約→売買契約→決済・引き渡し」という5つのステップで進みます。
一つずつ見ていけば、決して複雑ではありません。
信頼できる親族か、司法書士・弁護士といった専門家が一般的です。
必要なものは、実印と印鑑証明書です。所要時間は、書類がそろえば1日程度です。
この媒介契約には、大きく分けて3つのタイプがあります。
- 複数の会社に同時にお願いできる「一般媒介」
- 1社だけにお願いする「専任媒介」「専属専任媒介」
1社に絞るタイプは、その会社が責任を持って積極的に買主を探してくれる安心感があり、一般媒介は幅広く声をかけられるという違いがあります。



どちらが向いているかは、「とにかく早く売りたいのか」「時間をかけても高く売りたいのか」によって変わるので、担当者に特徴を説明してもらったうえで選びましょう。
売りたい不動産にまだローンが残っている場合は、売却代金でローンを完済し、金融機関が設定している担保(抵当権)を外す「抵当権抹消登記」という手続きが必要になります。



代理人に売却を任せるときは、この抵当権抹消の手続きまで委任内容に含めておくと、決済の場面でスムーズに進みます。
注意点として、売買契約や決済の場面では、たとえ代理人が立ち会う場合でも、司法書士などが本人の売却の意思を電話などで確認することがあります。
これは「本当に本人が売る気持ちでいるか」を確かめる大切な手続きで、委任状があっても省略はできません。



なお、「契約のたびに不動産会社の店舗へ行くのは体力的に大変」「家族と一緒に話を聞きたい」という方のために、担当者が自宅まで訪問し、その場で契約を迫らず丁寧に説明してくれる会社もあります。
家族同席も歓迎というところが多いので、無理なく相談できる進め方を選びましょう。


委任状を使った不動産売却の事例紹介|うまくいった人・苦労した人


ここでは、委任状を使って実際に不動産を売却した方の事例を2つご紹介します。
「自分と似ているな」と感じる場面がきっとあるはずです。
不動産売却の相談現場では、こうしたケースを本当によく見かけます。
成功事例:遠方の相続実家を、兄が代表してスムーズに売却
最初にご紹介するのは、遠方の相続不動産を、共有者の一人が代表して委任状で売却し、無事に現金化できたケースです。
- 田中正一さん(62歳・会社員・既婚・東京暮らし)
- 半年前、地方都市に住んでいた母が亡くなり、築35年の実家を、田中さんと弟・妹の3人で相続
- 3人とも実家から離れた場所に住んでおり、誰も戻る予定はなし
きっかけは、固定資産税の通知書が田中さんのもとに届いたことでした。
「誰も住まないのに、税金とこの先の管理だけ続くのか……」。実家に帰省したとき、伸びきった庭の草と、閉め切ったままの雨戸を見て、田中さんは決心しました。



これは早く手放したほうがいい 。
ところが、すぐに壁にぶつかりました。



3人とも遠方に住んでいるのに、契約のたびに全員で集まれるだろうか。
弟は単身赴任中、妹は子育てで忙しく、3人の予定を合わせるのは現実的ではありません。
妹からは「お兄ちゃん、手続きとか全然分からないし、何度も帰るのは無理だよ」と相談を受けました。
そこで田中さんは、まず地元の不動産会社に連絡しました。
担当者から「ご長男の田中さんが代表して、弟さんと妹さんから委任状をいただければ、お二人が立ち会えなくても進められますよ」と提案を受けます。
そして、次の方法で進みました。
- 3人で「売る」という方針を確認
- 相続登記で名義を3人に整える
- 弟と妹がそれぞれ実印を押した委任状と印鑑証明書を田中さんに郵送
書類のやりとりはありましたが、契約の場に集まる必要はありませんでした。
結果として、実家は無事に売却でき、代金は3人で分けることができました。



正直、手続きの前は『何度も帰省しないといけないのか』と気が重かったんです。でも、委任状のおかげで、弟も妹も一度も帰省せずに済みました。早めに動いて本当によかった。
築年数が経った家でしたが、古家のまま現状で買い取ってくれる会社もあると知り、片付けや残置物(家に残った家具や荷物)の処分に追われる心配も、思ったほどではなかったそうです。



相続税の申告期限のこともあって急いでいたのですが、買主を探す時間が省ける買取という方法があると教えてもらえて、気持ちがずいぶん楽になりました。
田中さんのように、共有名義で全員が遠方というケースでは、代表者を一人決めて委任状を集める方法が、いちばん現実的な進め方になります。
苦労事例:委任内容が曖昧で、契約直前に作り直しに
次にご紹介するのは、委任状の書き方が曖昧だったために、契約の直前で作り直すことになったケースです。早めに専門家に相談していれば防げた苦労でした。
- 佐藤久子さん(68歳・無職・夫と二人暮らし)
- 足を悪くしてからは外出が困難に
- 亡き父から相続したマンションを売ろうと考えたが、契約のために何度も外出するのは体力的に厳しい状況
「娘に代わりに動いてもらおう」。そう考えた佐藤さんは、近くに住む長女に手続きを任せることにしました。インターネットで見つけた委任状のひな形を参考に、自分で書類を用意しました。
ところが、売買契約の直前になって、不動産会社の担当者からこう指摘されました。
「佐藤さん、この委任状だと『売却に関する一切の件』としか書かれていなくて、代金を受け取る権限がはっきりしないんです」。
佐藤さんは戸惑いました。



えっ、ちゃんと書いたつもりだったのに……。
長女も「お母さん、これじゃ決済のときに困るって言われたよ」と困惑顔です。
曖昧な表現が、思わぬ落とし穴になっていたのです。
担当者のアドバイスで、佐藤さんは委任状を作り直すことにしました。
- 「売買契約の締結」「売買代金の受領」「所有権移転登記の申請」と、任せる行為をひとつずつ具体的に書き出す
- 再度実印を押し、3か月以内の印鑑証明書を取り直して添付
- 念のため捨印(あらかじめ欄外に押しておく訂正用の印)は押さないようにする
捨印があると、本人の知らないところで内容を書き換えられるリスクがあるためです。
作り直した委任状で、無事に売却は完了しました。



最初から専門家に見てもらえばよかった、というのが正直な気持ちです。
でも、おかげで委任状は中身をきちんと書くことが大事だと身をもって学びました。
これから同じように代理を頼む方には、面倒でも一度プロに確認してもらってほしいです。
委任状は一見シンプルですが、「売買契約」「代金の受領」「登記の申請」といった行為を、ひとつずつ漏れなく書き込むことが、決済をスムーズに進めるカギになります。
なお、佐藤さんのように外出が難しい場合でも、担当者が自宅まで来てくれたり、書類のやりとりや説明をオンラインで進められたりする会社もあります。



「店舗まで行くのが大変」という理由で売却をあきらめる前に、訪問やオンラインに対応してくれる会社を探してみると、選択肢はぐっと広がります。
2つの事例から学ぶ、委任状を安全に使うための教訓
ふたつの事例から見えてくる教訓は、シンプルです。
委任状は「誰に頼むか」と「何を、どこまで任せるかを具体的に書くか」で、結果が大きく変わります。
田中さんのケースが順調だったのは、最初に不動産会社へ相談し、委任の範囲を明確にしてから書類を整えたからです。
一方、佐藤さんが苦労したのは、曖昧な表現のまま自己流で作ってしまった点にありました。
委任状そのものは難しい書類ではありませんが、ひとつの言葉の選び方で効力が変わります。
だからこそ、信頼できる代理人を選び、委任内容を具体的に書き、実印と印鑑証明書をきちんとそろえる——この基本を守ることが、安心して売却を終えるための近道です。



相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月)が迫っているなど、急いで現金化したい事情がある場合は、買主探しが不要で最短2週間ほどで引き渡しまで進められる「直接買取」という方法もあります。
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状況に合わせて、無理のない進め方を選ぼう!


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不動産売却の委任状に関するよくある質問
記事の中でカバーしきれなかった、委任状にまつわる素朴な疑問にお答えします。


まとめ|委任状を味方につけて、無理なく不動産売却を進めよう


最後に、この記事の要点を整理します。
委任状は、「行けない・集まれない」を解決し、あなたの不動産売却を後押ししてくれる心強い味方です。
ポイントは3つです。
- 不動産売却の委任状とは、売却の手続きを信頼できる代理人に任せるための書類であり、遠方・共有・多忙といった事情があっても売却を進められる
- 委任状は書式自由でも、委任内容を具体的に書き、実印と印鑑証明書をそろえることが必須で、捨印や曖昧な表現は避ける
- 認知症で判断能力がない場合や共有者の一部が反対している場合など、委任状では売れないケースもあるため、迷ったら早めに専門家へ相談する
5分でできる最初のアクションとして、まずはご自宅の登記事項証明書を法務局のオンラインサービスで取り寄せてみてください。
手数料は500円ほど、スマホからでも申請でき、土地の面積や建物の情報、現在の名義がひと目で分かります。
これが、売却に向けた確かな第一歩になります。



そのうえで、委任状の書き方や売却の進め方に不安があれば、宅地建物取引士や司法書士、税金面では税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談することをおすすめします。
遠方で何度も足を運べない方や、家族と一緒に話を聞きたい方は、自宅訪問やオンライン対応に応じてくれる不動産会社を選べば、体力的な負担を抑えながら進められます。
あなたの状況に合った方法で、安心して一歩を踏み出していきましょう。

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