不動産会社の窓口で「この物件は建て替えができないので、うちでは扱えません」と言われて、途方に暮れていませんか。
ファイナンシャル・プランナー実家の前の道が細くて車も入らない、そんな家を相続してしまった方からのご相談は、年々増えています。
先に結論をお伝えします。再建築不可物件は、売れます。
ただし「誰に、どんな方法で売るか」を間違えると、時間もお金も余計にかかってしまいます。
この記事では、売却の相場感、3つの売り方、そして明日からできる手順を分かりやすく説明します。
読み終わるころには、「まず何から手をつければいいか」がはっきりしているはずです。
再建築不可物件の売却は「できます」──最初に知ってほしい3つの答え


結論から言えば、再建築不可物件は売却できます。
ただし、買ってくれる相手が一般の住宅購入者から「隣の家の所有者」や「投資家」「専門の買取業者」へと入れ替わるため、売り方も価格の考え方も、普通の家とは変える必要があります。
まず、言葉の意味を整理させてください。
原因のほとんどは「接道義務」を満たしていないことにあります。
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火事のときに消防車が入れる、救急車が横付けできる。
そのための決まりだね!



この基準ができる前に建てられた家が、いまも全国にたくさん残っており、それが再建築不可物件と呼ばれています。
原因は接道だけではありません。
市街化調整区域といって、都市計画法によって「これ以上、街を広げないようにしましょう」と定められたエリアにある家も、建て替えに厳しい制限がかかる場合があります。
ご自身の物件がどのケースに当てはまるのかは、後ほどご紹介する方法で確認できますので、ここでは「理由はひとつではない」とだけ覚えておいてください。
そのうえで、お伝えしたい答えは3つです。
- 売れないのではなく、買い手の種類が違うだけ
建て替えができない土地でも、リフォームして賃貸に出せば家賃収入が生まれます。
隣の家の人が買えば、自分の敷地と一体になって間口が広がり、土地の価値がぐっと上がることもあります。買い手は確かに限定されますが、ゼロではありません。 - 価格の目安について
一般的には、同じ広さ・同じ立地の普通の物件と比べて5割から7割程度が取引の目安とされます。
専門の買取業者に直接売る場合は、業者が再販の手間とリスクを引き受けるぶん、3割から5割程度になることもあります。
「安い」と感じるかもしれませんが、持ち続けるあいだも固定資産税や管理の負担は毎年発生します。
手元に残る金額と、これから出ていくお金の両方を並べて考えることが大切です。 - 売り方が主に3つに絞られる
仲介で個人や投資家を探す方法、隣地の所有者に買い取ってもらう方法、そして専門の買取業者に直接売る方法です。
どれを選ぶかは、お急ぎ度合いで決まります。
相続税の申告期限が迫っている、遠方で管理ができない、体力的に何度も現地へ行けない──こうした事情があるなら、確実性とスピードを優先する判断が現実的です。
2025年4月に建築基準法が改正され、再建築不可物件を取り巻く状況は静かに変わっています。



この点は次の章で詳しくお話しします。


データで見る再建築不可物件の今──空き家900万戸と2025年の法改正


公的なデータを並べてみると、再建築不可物件は「持ち続けるほど選択肢が減っていく」性質を持つことが見えてきます。
裏を返せば、動ける体力と判断力があるうちに手を打つほど、選べる出口が多いということです。
空き家900万戸時代──買主が「選ぶ側」になっている現実
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年9月確報公表)によると、全国の空き家は900万2千戸で過去最多、総住宅数に占める空き家率は13.8%と過去最高になりました。
さらに、賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる使い道の決まっていない空き家は385万6千戸に上ります。


7〜8軒に1軒が空き家、という数字です。ご近所を思い浮かべてください。
雨戸が閉まったままの家、郵便受けからチラシがあふれている家、庭木が道路にはみ出している家。
あの光景が全国で増え続けているということです。
これは売主にとって、買い手が「他にも選べる家がたくさんある」状態を意味します。



だからこそ、条件面でハンディのある再建築不可物件は、価格や引き渡し条件を工夫しないと、そもそも土俵に上がれません。
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逆に言えば、条件を整えて「この物件なら使える」と思わせられれば、買い手はちゃんと現れるってことだよ。
地価は5年連続で上昇中──隣の家の人が動きやすい時期
国土交通省の「令和8年地価公示」(2026年3月18日公表)では、全国平均で全用途・住宅地・商業地のいずれも5年連続の上昇となり、住宅地は前年と同じ2.1%の上昇幅でした。





「うちの土地は建て替えができないのだから、地価が上がっても関係ない」と思われるかもしれません。ところが、ここに大事な意味があります。
土地の値段が上がっているということは、隣地の所有者にとって「自分の敷地を広げる価値」も上がっているということです。
あなたの土地を買い足すことで、隣の家の間口が2メートル以上になり、将来の建て替えができるようになる。
そうなれば、隣の土地の価値は跳ね上がります。
地価の上昇局面は、隣地所有者への売却という選択肢が最も現実味を帯びる時期でもあるのです。
価格指数が教えてくれる「戸建ての現実」──だから出口の設計が要る
もうひとつ、国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数」も見ておきましょう。
これは2010年の平均を100として、実際の取引価格の動きを指数にしたものです。
直近の数字を見ると、マンションが200を大きく超えて2倍以上に値上がりしている一方、戸建住宅は120台にとどまっています。


同じ「不動産価格の上昇」というニュースでも、中身はまったく違うということです。
テレビで「マンション価格が過去最高」と報じられていても、古い戸建て、まして建て替えができない戸建ては、その波にほとんど乗れていません。
待っていれば値上がりする、という期待はしないほうが現実的です。



だからこそ、再建築不可物件は「相場が上がるのを待つ」戦略ではなく、「どの相手に、どんな条件で渡すか」という出口の設計で手取りを増やす発想に切り替える必要があります。
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誰に売るかで、同じ物件の値段が2倍近く変わることさえあるんだよ。
2025年4月の建築基準法改正──大規模リフォームのハードルが上がった
いま最も注意していただきたいのが、この法改正です。
2025年4月1日に施行された改正建築基準法により、これまで木造2階建て住宅などで審査が省略されていた「4号特例」が縮小されました。
その結果、柱や梁だけを残すようなスケルトンリフォーム(骨組みだけ残す大規模な改修)を含む「大規模の修繕・模様替」にも、原則として建築確認申請が必要になっています。


これが再建築不可物件にどう響くのか。
骨組みだけ残して丸ごと作り直すリフォームは、これまで再建築不可物件の再生手段の切り札でした。
買取業者や投資家は「建て替えはできなくても、大規模リフォームで蘇らせて貸せばいい」という出口を持っていたのです。
ところが確認申請が必要になれば、接道条件を満たさない物件では申請が通りにくくなります。
つまり、買い手側の使い道が狭まるということ。
売却を考えているなら、この変化は無視できません。



工事の内容や自治体の運用によって扱いは分かれますので、実際の可否は物件所在地の特定行政庁(建築確認を行う自治体の窓口)に確認する必要があります。
空き家のまま放置すると、税金の負担が変わることがある
もうひとつ、税金の話です。
空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)が2023年12月に改正され、放置が進んで危険な状態に近づいている家は「管理不全空家」として市区町村から指導・勧告を受ける対象になりました。
勧告を受けると、住宅が建つ土地の固定資産税を軽くしてくれる「住宅用地の特例」が外れます。


住宅用地の特例は、200平方メートル以下の部分について固定資産税の課税標準を6分の1にする仕組みです。
これが外れると、毎年届くあの納税通知書の金額が大きく変わる可能性があります。



年に一度届く一枚の紙が、ある年から急に重くなる。そう考えると、「そのうち考えよう」の先送りコストは決して小さくありません。
しかも、負担はお金だけではありません。
庭木の枝が隣家に伸びれば苦情が来ますし、瓦が落ちて通行人に当たれば損害賠償を求められる可能性もあります。
草刈りのために月に一度、車で片道2時間かけて通っている。そんな方に、相談現場でよくお会いします。
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年齢を重ねるほど、その往復がこたえるね…



売却は「資産を手放すこと」であると同時に、こうした管理の負担を手放すことでもあるのです。
同じ調査で、65歳以上の方がいる世帯は2,375万世帯、全世帯の42.7%にのぼることも分かっています。
これから相続で持ち主が変わる家は、まだまだ増えていきます。
ご自身の代で整理しておくことが、そのままお子さんやお孫さんの負担を減らすことにつながります。


再建築不可物件を売却する3つの方法と、明日からできる手順


売り方は大きく3つ、仲介・隣地所有者への売却・専門の買取業者への売却です。
急ぐなら買取、価格を優先して時間をかけられるなら隣地交渉や仲介、というのが基本の考え方になります。
仲介・隣地・買取──3つの売却方法を比較する
まず、それぞれの特徴を整理しましょう。
仲介とは、不動産会社に買主を探してもらう方法です。
価格は3つの中で高くなりやすく、通常物件の5〜7割程度が目安です。
ただし買主は現金で買える投資家や、リフォーム前提の個人に限られます。
というのも、建て替えができない土地は金融機関にとって担保としての評価が低く、住宅ローンの審査が通りにくいからです。
買主が見つかるまで半年、一年とかかることも珍しくありません。
また、売った後に雨漏りやシロアリ被害が見つかると、売主が「契約不適合責任」(契約の内容に合わない欠陥について売主が負う責任)を問われる可能性があります。
隣地所有者への売却は、価格面で最も期待できる選択肢です。
隣の方にとっては、あなたの土地を取得することで接道が確保でき、自分の土地が再建築可能になるという大きなメリットがあるからです。
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通常物件の6〜8割程度で成立するケースもあるよ!
一方で、相手にその気がなければ話は進みませんし、ご近所づきあいの中で価格交渉をするのは精神的な負担にもなります。
専門の買取業者への売却は、不動産会社が直接買主になる方法です。
価格は3〜5割程度と下がる傾向がありますが、買主を探す時間がゼロになります。
再建築不可物件の再販ノウハウを持つ会社なら、現況のまま、つまり家財道具などの残置物が残った状態でも買い取れます。
仲介手数料がかからず、契約不適合責任を免除してもらえる契約が一般的なので、売った後に修繕費を請求される心配もありません。
相談から最短2週間ほどで引き渡しと入金まで進められる会社もあり、相続税の申告期限(相続開始から10か月)が迫っている場合の現実的な受け皿になります。
再建築可能にできる余地はないか、先に確認する
売る前に一度だけ確認していただきたいのが、「再建築不可を解消できないか」という点です。
これができれば、価格は大きく変わります。
方法は主に3つあります。
- セットバック
前面道路の幅が4メートル未満でも、建築基準法第42条第2項の道路(いわゆる2項道路)に該当すれば、道路の中心線から2メートル下がった線まで敷地を後退させることで、建築が認められる場合があります。 - 隣地の一部を買い取って間口を2メートル以上にする
数十センチ足りないだけ、というケースは意外と多いものです。 - 建築基準法第43条第2項の認定・許可(かつて「43条但し書き」と呼ばれた制度)
周囲に広い空き地がある、避難や通行に支障がないなどの条件を特定行政庁が認めれば、建築が可能になることがあります。
確認方法はシンプルです。
物件のある市区町村の建築指導課に電話し、住所を伝えて「前面道路の種別と幅員」を尋ねてください。
多くの自治体で無料、10分ほどで答えが返ってきます。
あわせて法務局で公図と登記事項証明書を取り寄せれば、土地の形と権利関係が分かります。
オンライン請求なら1通500円前後、窓口より安く済みます。



境界が不明確な場合は土地家屋調査士に測量を依頼することになりますが、費用は数十万円かかることもあるため、売却価格への効果を天秤にかけて判断してください。
このとき一緒に確認しておきたいのが、前面の通路が私道(個人が所有する道)かどうか、そして塀や庇が隣地にはみ出す越境がないかどうかです。
私道の場合、通行や水道管の工事に他の所有者の同意が必要になることがあり、買主にとっては見えないリスクになります。
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こうした事情は隠さず伝えたほうが、結果的に話は早く進みますよ!
査定から引き渡しまでの流れ──必要なものと所要時間
ここからは具体的な手順です。
必要なのは、以下の書類です。
- 登記事項証明書
- 公図
- 固定資産税の納税通知書
- 購入時の売買契約書(あれば)
- 建物の図面(あれば)
手元にないものは後から取り寄せられるので、ある物だけで大丈夫です。所要時間は探す作業を含めて1時間ほど。
ここで大切なのは、再建築不可物件の取引実績がある会社を選ぶことです。
実績のない会社は判断がつかず、極端に低い金額を出すか、そもそも取り扱いを断るかのどちらかになりがちです。
査定は無料が一般的で、複数社に依頼して価格と説明の中身を比べてください。



「なぜこの金額なのか」を接道状況や建物の状態にひもづけて説明できる担当者が信頼できます。
このとき、店舗まで出向く必要はありません。
担当者が自宅まで訪問し、物件の状態を一緒に見ながら説明してくれる会社が増えています。
その場で契約を迫られることはなく、「話を聞くだけ」で終えても構いません。
ご家族に同席してもらえば、後から説明を繰り返す手間も省けます。
遠方にお住まいなら、書類のやりとりや面談をオンライン中心で進められる会社もあります。
相続した物件の場合は、相続登記が前提になります。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を取得したと知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります。


登記の名義が亡くなった方のままでは売却手続きに進めませんので、司法書士に依頼するのが確実です。
戸籍の収集から登記完了まで、1〜2か月みておくと安心です。
買取であれば、契約から引き渡しまで2週間程度で完了することもあります。
売却で利益が出た場合は、翌年の確定申告で譲渡所得を申告します。
相続した空き家を売る場合は、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例(租税特別措置法第35条第3項、いわゆる相続空き家の3,000万円特別控除)が使える可能性があります。
適用の可否は要件が細かいため、税理士か税務署に確認してください。


やってはいけない3つのこと
最後に、相談現場でよく見かける「もったいない失敗」を3つ挙げます。
- 先に建物を解体して更地にしてしまう
古い家だから壊したほうが売れるはず、と考えたくなりますが、再建築不可の土地は更地にすると新しい建物が建てられないため、資材置き場や家庭菜園くらいしか使い道がなくなります。
さらに住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がり、解体費用も自己負担です。
解体は、必ず売却先が決まってから検討してください。 - 独断で大規模なリフォームをする
前述の2025年4月の法改正により、主要構造部の過半に及ぶ修繕には建築確認申請が必要になりました。
良かれと思って始めた工事が途中で止まる可能性があります。 - 査定額の高さだけで依頼先を決める
契約後に「調査したら再建築不可だったので」と価格を下げられる例があります。
買取価格そのものより、仲介手数料や測量費、残置物の処分費を差し引いた「最終的に手元に残る金額」で比べてください。


実例で見る再建築不可物件の売却──2つのケース


ここでは、実際の相談現場でよくある2つのケースを、個人が特定されないよう再構成してご紹介します。
ひとつは短期間で解決した例、もうひとつは遠回りをしてしまった例です。
納税期限が迫るなか、2週間で現金化した68歳女性のケース
- Aさん(68歳・元中学校教員・夫と二人暮らし)
- 半年前に母親を看取り、東京都内の下町にある実家(木造2階建て、築52年)を、妹と二人で相続
- 路地の奥にあり、玄関前の通路は幅1.8メートル。乳母車がやっと通る幅。
相続税の申告が必要だと税理士から告げられ、納税資金が足りないと分かった瞬間でした。



現金は母の預金しかなくて、それでは足りないんです。家を売るしかないんですが、期限までもう4か月しかなくて。
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月。
カレンダーを見るたびに胃が痛くなる、とAさんは話していました。
地元の不動産会社2社に相談したものの、いずれも「建て替えができない物件は、買い手を探すのに時間がかかります」と言葉を濁されました。



妹には『お姉ちゃん、間に合わなかったらどうするの』と毎週電話がかかってくるし、家の中には母の荷物がそのまま残っていて、片付けだけで何か月もかかりそうで。
仏壇、桐の箪笥、押し入れいっぱいの布団。60代半ばの体には、それを一人で運び出すのは無理な話でした。
- 市の建築指導課に電話
- 前面通路が建築基準法上の道路ではないこと、43条の許可も見込みが薄いことを確認



調べる前は、役所に電話するなんて大ごとだと思っていました。でも、住所を言っただけで教えてもらえたんです。
次に、再建築不可物件の買取実績を掲げる会社を含めて3社に査定を依頼しました。
結果は三者三様。
1社は「取り扱いが難しい」と辞退、1社は極端に低い金額、そして残る1社が、路地の奥という立地でも賃貸として再生できる見込みを示したうえで、根拠のある金額を提示しました。
この会社は自宅まで来てくれ、妹さんも同席したうえで、路地の幅を巻尺で測りながら、建物の傾きや床下の状態を一緒に確認して説明してくれたそうです。
「残置物はそのままで結構です。お仏壇だけご都合のよい形にしていただければ、他の家財はこちらで処分します。契約不適合責任も免除の契約にしますので、売った後に雨漏りが見つかっても、修繕費をお求めすることはありません」。
この一言で、Aさんの肩の力が抜けたそうです。
仲介手数料もかからず、相続登記は同社が紹介した司法書士が3週間で済ませてくれました。そして、契約から2週間後に決済と引き渡しが完了。申告期限まで、まだ2か月の余裕がありました。
売却価格は、同じ広さの再建築可能な土地の相場と比べれば決して高くはありませんでした。それでもAさんはこう言います。



金額だけ見れば安いのかもしれません。でも、期限に間に合ったこと、荷物を運び出さずに済んだこと、妹と揉めずに済んだこと。それを全部お金に換算したら、私にとっては十分でした。
急ぐ事情があるときは、価格ではなく確実性を軸に選ぶ。この判断が、Aさんを守ったのだと思います。
良かれと思って更地にしてしまった52歳男性のケース
- Bさん(52歳・大阪府在住の会社員・妻と高校生の息子の3人暮らし)
- 父親から、隣県にある築48年の木造2階建てを相続
- 前面道路の幅員は3.2メートル、間口は1.7メートル。典型的な再建築不可物件
相続から1年、空き家のまま放置していたところ、近隣の方から「屋根瓦が落ちてきそうで怖い」と連絡が入りました。



正直、ドキッとしました。もし誰かに当たったら、損害賠償の話になりますよね。
Bさんは考えました。
古い建物が残っているから売れないのだ、更地にすればきれいな土地として売れるはずだ、と。
妻は「一度、不動産会社に聞いてみたら」と言いましたが、Bさんは150万円をかけて建物を解体しました。



解体してからのほうが査定も上がるだろう。
ところが、その後が誤算でした。
相談した不動産会社の担当者は、申し訳なさそうにこう告げたのです。
「更地にされたのですね……。この土地は接道義務を満たしていないので、新しい建物は建てられません。建物がないと、リフォームして貸すという使い道もなくなってしまうんです。」
さらに追い打ちがかかりました。
翌年度の固定資産税の納税通知書を開いたBさんは、目を疑ったそうです。
住宅用地の特例が外れ、税額が跳ね上がっていたのです。



建物を壊しただけで、こんなに変わるとは思わなかった。誰も教えてくれなかった、と言いたいところですが、聞かなかった自分の責任です。
転機は、担当者からの何気ない一言でした。
「お隣は、建て替えをお考えではありませんか。この土地を買い足せば、間口が広がって再建築できるようになるかもしれません。」
半信半疑のまま、Bさんは隣家を訪ねました。菓子折りを持って、玄関先で頭を下げるところからのスタートです。



実は、父の土地を売ろうと思っているんですが、うちだけでは建て替えができない土地でして……。もしお隣で使い道があればと思いまして。
すると、隣家の70代のご主人はこう答えたそうです。
「実はうちも、息子夫婦と二世帯にしたくてね。おたくの土地が付けば、道までちゃんと出られるようになる。前から気になっていたんですよ。」
話は前進し、解体から半年後、隣地所有者への売却が成立しました。
価格は、更地でも使い道が限られる土地としては悪くない水準でした。
それでも最終的な手残りは、解体費用の150万円と、余分に払った1年分の固定資産税を差し引くと、当初の想定を下回ったといいます。



もし最初に一本電話をして専門家に聞いていたら、解体費用は払わずに済んだし、建物が残っていれば買取業者という選択肢もあった。
もっと早く、もっと高く終わっていたはずです。



動く前に、まず聞く。この順番だけは、間違えないでいただきたいと思います。
相談は無料で受け付けている会社がほとんどですし、電話一本で終わることも多いのですから。


再建築不可物件の売却でよくある5つの質問
ここまでで大きな流れはつかめたと思いますので、最後に細かな疑問を片づけておきましょう。
相談現場で実際によく寄せられる質問を、5つ選んでお答えします。
どれも「聞いてよかった」と言われることの多い項目です。


まとめ──今日、5分でできる最初の一歩


長くなりましたので、要点を3つに絞ります。
- 再建築不可物件は売れる
買い手が隣地所有者・投資家・専門の買取業者に限られるだけで、道が閉ざされているわけではありません。 - 相場は通常物件の5〜7割が目安だが、売却方法によって幅がある
急ぐなら買取、価格を追うなら隣地交渉や仲介と、優先順位で選び分けてください。 - 先に解体しない、独断で大規模リフォームをしない
この2つを守るだけで、失うお金を大きく減らせます。
そのうえで、今日できる5分のアクションをひとつだけご提案します。
物件のある市区町村の建築指導課に電話をして、「前面道路の種別と幅員」を聞いてみてください。住所を伝えるだけで、多くの自治体が無料で答えてくれます。
この一本の電話で、セットバックや建築基準法第43条第2項の許可によって再建築可能にできる余地があるかどうか、大まかな見通しが立ちます。
そのうえで、査定を依頼する際は、再建築不可物件の実績がある会社を選んでください。
訪問して物件を見ながら説明してくれる会社、残置物や古家をそのまま現況で買い取ってくれる会社、契約不適合責任を免除してくれる会社であれば、体力的な負担も、売った後のリスクも小さく抑えられます。
相続や税金が絡む場合は、司法書士や税理士とも連携できる会社だと、窓口がひとつで済んで楽です。



不安なのは、分からないからです。道路の幅、建物の状態、税金の期限。ひとつずつ数字にしていけば、必ず判断できるようになります。焦らず、でも先延ばしにせず、今日の5分から始めてみてください。

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