
親から相続した実家が兄弟の共有名義になっていて、売りたいのに話が進まない。



夫婦で買ったマンションを離婚で手放したいけど、共有名義だとどうすればいいの?
――そんなお悩みを抱えていませんか。
共有名義の不動産売却は、名義人全員の同意が必要だったり、持分の扱いが複雑だったりと、単独名義の売却とはまったく勝手が違います。



でも、ご安心ください。
正しい知識と手順を押さえれば、共有名義の不動産もきちんと売却できます。
この記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)かつ宅地建物取引の実務に精通した専門家の視点から、共有名義不動産の売却方法を、どこよりもわかりやすく解説します。
- 共有名義不動産の売却方法の全体像(何から始めるべきか)
- 4つの売却パターンの違いと、あなたに合った方法の選び方
- 売却に必要な手続き・書類と、オンライン対応の可否
- 税金の計算方法と使える特例(3,000万円特別控除の適用条件)
- よくあるトラブルの実例と、事前にできる対策
共有名義の不動産売却は自分の状況に合った方法を選ぶ


共有名義不動産の売却は、「共有者全員で足並みをそろえる」のが理想ですが、全員の合意が難しい場合でも、自分の持分だけを売却するなど複数の選択肢があります。
大切なのは、自分の状況に合った方法を選ぶことです。
そもそも「共有名義不動産の売却」とは何か
不動産売却の中でも、特に「誰の同意が必要か」「税金はどう分けるか」といった点で、通常の売却より注意すべきことが多くなります。



不動産売却の相談現場では、「共有名義だから売れない」と思い込んで何年も放置してしまうケースをよく見かけます。
しかし実際には、状況に応じた方法がちゃんと用意されています。
ここでは、まず全体像をお伝えします。
知っておきたい4つの売却パターン
共有名義不動産を売却する方法は、大きく分けて4つあります。
1|共有者全員の合意で不動産全体を売却する
これが最もシンプルで、売却価格も市場相場に近くなるため、手取り額が一番多くなる傾向があります。
ただし、共有者全員の同意と協力が必要です。
2|自分の持分だけを他の共有者に買い取ってもらう
たとえば兄弟3人で実家を共有しているとき、自分の持分を他の兄弟に譲るイメージです。
身内同士の話し合いで済むため、第三者を巻き込まずに解決できます。
3|自分の持分だけを第三者(専門の買取会社など)に売却する
自分の持分だけを第三者(専門の買取会社など)に売却する
他の共有者の同意がなくても、自分の持分については自由に売却できます。
ただし、持分だけの売却は市場価格より割安になることが一般的です。
4|土地の場合は「分筆」して、それぞれの単独名義にしてから売却する
土地を物理的に分けて、それぞれが独立した土地として売却するやり方です。
ただし、建物が建っている場合や面積が小さい場合は現実的でないこともあります。
相続・離婚・納税期限…悩み別に最適な方法を選ぶ
状況別に整理すると、相続で共有名義になってしまい「全員で売りたい」場合は1つ目の方法が最善です。
一方、「他の共有者と連絡が取れない」「意見が合わない」という場合は、3つ目の持分売却も選択肢に入ってきます。
相続税の納税期限が迫っている場合は、買取専門の不動産会社に相談すると、最短2週間程度で現金化できるケースもあります。
知っておきたい数字で見る「共有名義不動産」の今


共有名義の不動産を取り巻く環境は、ここ数年で大きく変わっています。
不動産価格の上昇、空き家の増加、そして相続登記の義務化―
この3つの変化を知っておくことが、売却の判断に直結します。
不動産価格は2010年の約1.5倍まで上昇している
まず、不動産価格の動きから見てみましょう。
国土交通省が毎月公表している「不動産価格指数」(2010年の平均を100として、不動産の値動きを数値化したもの)によると、2025年9月時点の住宅総合の指数は全国で145.4となっています。
つまり、2010年と比べて住宅価格は約1.45倍に上がっているということです。


たとえば、ご自宅の近所で「売物件」の看板が出ているのを見かけたことはありませんか。
あの看板に書かれた価格、実は10年前と比べるとかなり上がっている可能性が高いのです。
特にマンションは顕著で、同調査によると区分所有マンションの指数は222.2と、2010年の2倍以上になっています。
戸建住宅や住宅地も118〜120前後で推移しており、こちらも緩やかに上昇しています。



つまり、「いつか売ろう」と思っている不動産は、今の市場環境では比較的よい条件で売れる可能性があるということです。
全国の空き家は900万戸を突破、相続がきっかけの約6割
次に、空き家の現状です。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月時点)によると、全国の空き家数は約900万戸で過去最多を更新しました。
総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.8%と過去最高を記録しています。
しかも、この空き家数は30年前(1993年)と比較すると約2倍に膨れ上がっています。
さらに注目すべきは、賃貸や売却の予定がなく放置されている空き家(「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」)が約385万戸にのぼり、5年前から約37万戸も増えているという点です。
こうした空き家の取得経緯で最も多いのが「相続」で、国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」によると全体の約58%を占めています。





つまり、相続で受け取った不動産が共有名義のまま宙に浮いてしまうことが、空き家増加の大きな原因になっているのです。
この数字を日常に置き換えると、あなたの住む街を歩いて見渡したとき、およそ7軒に1軒は空き家ということになります。
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相続で受け継いだ実家が共有名義のまま放置されると、この「管理されない空き家」の仲間入りをするってことだね。



空き家のまま放置すると、固定資産税の負担はもちろん、建物の老朽化、草木の繁茂、近隣からの苦情など、年を追うごとに管理の手間とコストが膨らんでいきます。
2024年4月から相続登記が義務化、放置すると過料の対象に
そして、もう一つの大きな変化が「相続登記の義務化」です。
2024年4月1日から施行された改正不動産登記法により、不動産を相続で取得した人は、その事実を知った日から3年以内に相続登記(名義変更の届出)をしなければならなくなりました。
正当な理由なくこの届出を怠ると、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。
| 相続したことを知った日から3年以内に登記 | 正当な理由がない場合は10万円以下の過料(ペナルティ)の対象になります。 |
| 義務化前の相続も対象 | 義務化前に相続したことを知った不動産は令和9年3月末までに登記する必要があります。 |
この義務化は、2024年4月以前に発生した相続にも適用されます。
過去に相続した不動産で登記が済んでいない場合、2027年3月31日までに登記を完了させる必要があります。



「うちの実家、亡くなった父の名義のままだった」という方は、期限が近づいていますので、早めに動くことが大切です。


国土交通省の資料(「所有者不明土地を取り巻く状況と課題について」)によれば、所有者不明土地は全国で約410万ヘクタールと推計されており、これは九州全体の面積(約368万ヘクタール)を上回る広さです。
その主な原因が相続登記の未了とされています。
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共有名義の不動産を放置すると、世代を重ねるごとに共有者がどんどん増えて、「誰が持ち主なのかわからない」状態になりかねないんだね。



早めに売却や名義整理をしておくことで、こうした問題を将来の家族に引き継がせずに済みます。
「まず何をすればいい?」共有名義不動産の売却ステップを具体的に解説


共有名義の不動産売却で最初にやるべきことは「共有者が誰なのかを正確に把握する」ことです。
ここがあいまいなままだと、どの売却方法を選んでも手続きが途中で止まってしまいます。
まずは法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、不動産の名義人が誰になっているかを確認しましょう。
パソコンやスマホから法務局のオンラインサービスで申請でき、手数料は窓口受取なら490円、郵送受取なら520円です。
届いた書類で、土地の面積や建物の構造、持分割合(たとえば「兄2分の1、弟2分の1」など)がひと目で分かります。
共有者が判明したら、次は全員に「売却したい」という意思を伝え、同意を確認します。
電話やメールでも構いませんが、後々のトラブルを防ぐために、書面やメールなど記録が残る形で意思確認をしておくと安心です。
全員が売却に前向きであれば、不動産全体の売却を目指しましょう。
一方、一部の共有者が反対している場合や連絡が取れない場合は、自分の持分だけの売却を検討します。
不動産全体を売却する場合、不動産会社との間で「媒介契約」を結びます。
これは「売却をお願いしますよ」という契約のことで、3つのタイプがあります。
「複数の会社に同時にお願いできるタイプ(一般媒介)」と「1社だけにお願いするタイプ(専任媒介・専属専任媒介)」です。
共有名義の場合は窓口が一本化される専任媒介の方が、共有者間の連絡調整もスムーズに進みやすい傾向があります。



ここで大切なのは、「売却代金をどう分けるか」「費用(仲介手数料、税金、司法書士報酬、印紙税など)を誰がどれだけ負担するか」をあらかじめ話し合っておくことです。
持分割合に応じて分配するのが基本ですが、共有者間で合意があれば異なる割合にすることもできます。
ただし、持分割合を大幅に超えた分配をすると、超過分に贈与税がかかる場合があるので注意が必要です。
費用の分担と代金の振込先は、できれば書面にまとめておくと安心です。
「言った・言わない」のトラブルは、事前の書面一枚で防げるものです。
不動産会社に連絡して、物件の査定を依頼します。
共有名義であることを伝えれば、その状況に合った売却プランを提案してくれます。
査定は通常無料で、最近はオンラインでの相談に対応している会社も増えています。
「店舗に足を運ぶのは体力的に大変」「遠方に住んでいて何度も行けない」という方でも、自宅にいながら相談を進められるのは心強いポイントです。
不動産の売却相談では、「しつこい営業をされるのでは」と不安に感じる方も多いですが、最近は訪問査定の際に担当者がご自宅まで来てくれるサービスもあります。
物件の状態を見ながら丁寧に説明してくれるので、よく分からないまま話が進む心配がありません。



ご家族と一緒に話を聞くこともできますので、一人で抱え込まずに相談してみることが大切です。
買主が見つかったら、売買契約を結びます。
共有名義の不動産を全体売却する場合、原則として共有者全員が売買契約に立ち会う必要があります。
ただし、遠方に住んでいるなど全員が集まるのが難しい場合は、他の共有者に委任状を作成して代理してもらうことができます。
委任状に決まった書式はありませんが、「どの不動産について」「誰に」「何を」委任するのかを具体的に記載しておくことが重要です。



あいまいな表現だと、後から「そこまで任せた覚えはない」というトラブルになりかねません。
不安な場合は、司法書士に作成を依頼すると安心です。報酬は5,000円〜2万円程度が目安です。
必要書類は、登記識別情報通知書(いわゆる権利証)、共有者全員の印鑑登録証明書・実印・住民票・身分証明書、そして土地の場合は境界確認書と地積測量図です。
書類の取得には1〜2週間かかることもあるので、早めに準備を始めましょう。
買主から売却代金を受け取り、所有権移転登記を行えば売却は完了です。
代金は持分割合に応じて各共有者に分配されます。
なお、不動産を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年の確定申告が必要です。



確定申告は共有者がそれぞれ個別に行います。
代表者がまとめて申告するのではない点に注意してください。
古い家・残置物があっても売れる「買取」という選択肢
「古い家だから、リフォームや片付けをしないと売れないのでは?」と心配される方もいますが、買取専門の不動産会社であれば、残置物(家に残った家具や荷物)がそのままでも、現状のまま買い取ってくれるケースがあります。
しかも、買取の場合は仲介業者を通さないため仲介手数料がかからず、売却後に建物の欠陥が見つかった場合の責任(これを「契約不適合責任」といいます)も免除してもらえることが多いので、古い家を売るときの大きな安心材料になります。
あなたと似た状況かも?共有名義不動産を売却した2つの事例


共有名義の不動産売却は「早めに動いた人ほどスムーズに進んだ」という声が実際に多く聞かれます。
ここでは、実際の相談現場で見られるケースをもとに、2つの事例をご紹介します。
兄弟3人の共有実家を「まずは査定だけ」で円満に売却できたケース
- 田中さん(仮名・62歳・会社員)
- 3年前に父親を亡くし、実家の土地・建物を兄(65歳)、妹(58歳)と3人で相続
- 持分はそれぞれ3分の1ずつ
- 実家は築35年の木造一戸建てで、東京から電車で2時間ほどの地方都市にある
ある日、田中さんのもとに固定資産税の通知書が届きました。
年間12万円ほどの税額を見て、ふと思いました。



誰も住んでいない家に、毎年これだけ払い続けるのか…
さらに夏場には近所の方から
「庭の草が道路にまではみ出していますよ。」
と連絡が入り、草刈りのために片道2時間をかけて実家に通う生活が始まりました。



このままじゃ、体力的にもお金的にも持たないな。
そう思った田中さんは、兄と妹に電話をかけました。
「売却したい」という田中さんの提案に、妹はすぐに賛成してくれました。
しかし、兄は「親父が建てた家を手放すのは忍びない。」と慎重な姿勢。
田中さんは悩みました。



兄貴の気持ちも分かる。
でも、このまま空き家にしておいたら、家はどんどん傷むし、固定資産税も払い続けなきゃいけない。
もし台風で屋根が飛んで近所に迷惑をかけたら、責任は3人が負うことになる。
妹からも「お兄ちゃんの気持ちは分かるけど、私も正直、管理費用の負担がきつい。相続登記の義務化もあるし、放っておくわけにもいかないよね。」とLINEが届きました。
田中さんは兄に



まずは査定だけでも受けてみないか。
売るかどうかは、金額を見てから3人で決めよう。
と提案しました。
まず、田中さんはオンラインで法務局に登記事項証明書を請求し、3人の持分割合を確認しました。
次に、共有名義の売却実績がある不動産会社に査定を依頼。
担当者が実家まで訪問してくれ、建物や土地の状態を丁寧にチェックしたうえで、



現状のままでも買い手は見つかりますよ。
と説明してくれました。
査定額は1,200万円。
この金額を兄に伝えると、「一人あたり400万円か。老後の資金の足しにもなるし、これなら売った方がいいかもしれないな。」
と前向きな反応に変わりました。
売買契約の際、兄は仕事の都合で立ち会えなかったため、田中さんを代理人とする委任状を作成。
契約手続きはスムーズに進み、最終的に引渡しまで約2か月で完了しました。
田中さんは振り返って、こう話しています。



最初から『売ろう』と押し付けていたら、兄は反発したと思います。
『まずは査定だけ』と段階を踏んだのがよかった。
それに、不動産会社の担当者が実家に来て、兄にも電話で丁寧に説明してくれたので、兄も納得して進められました。
もっと早く動けばよかったと、今は思っています。
共有者と意見が合わず自分の持分だけを売却したケース
- 佐藤さん(仮名・55歳・パート勤務)
- 亡くなった母親から兄(60歳)と二人で実家のマンション(築28年・3LDK)を相続
- 持分は2分の1ずつ
- 佐藤さんは別の場所に住んでおり、マンションには兄が一人で住み続けている
佐藤さんは子どもの大学進学を控え、まとまった資金が必要になりました。



自分の持分を売却して、教育資金に充てたい。
と考え、兄に相談しました。
しかし、兄の反応は予想以上に冷たいものでした。
「俺が住んでるんだから、売るなんてありえない。お前の持分を俺が買い取る余裕もない。」
佐藤さんは途方に暮れました。



私にも生活があるのに。
でも、兄が住んでいる家を無理やり売るわけにもいかないし、どうすればいいんだろう。
友人に相談すると、「共有持分だけでも売れるらしいよ。」と教えてもらい、インターネットで調べ始めました。
佐藤さんはまず、共有持分の売却に詳しい不動産会社に相談しました。
担当者からは、



共有持分だけの売却は法律上、他の共有者の同意がなくても可能です(民法第206条)。
ただし、持分だけだと買い手が限られるため、不動産全体の半額よりは低い金額になることが多いです。
と説明を受けました。
担当者はさらに、



売却前にお兄さんにもう一度話をしてみてはいかがですか。
持分を第三者に売ると、兄にとっても見知らぬ人と不動産を共有することになりますから、それを伝えれば兄が買い取る方向に動くかもしれません。
とアドバイスしてくれました。佐藤さんは兄に再度連絡し、



第三者に売ることもできるけど、できればお兄ちゃんに買い取ってほしい。
と伝えました。しかし兄は「そんなお金はない。」の一点張り。
佐藤さんは苦しみましたが、子どもの進学は待ってくれません。
最終的に、買取専門の不動産会社に持分を売却する決断をしました。
査定の結果、マンション全体の市場価格は約2,400万円で、佐藤さんの持分(2分の1)の買取価格は約600万円。
全体の半額である1,200万円と比べると半分程度でしたが、



兄との関係をこれ以上悪くしたくないし、子どもの進学に間に合わせたい。
と腹をくくりました。
手続きはすべてオンラインと郵送で完結。
佐藤さんは一度も店舗に足を運ぶことなく、約3週間で持分の売却が完了しました。
佐藤さんはこう話しています。



金額的には不動産全体を売った場合より少なくなりましたが、兄と裁判沙汰になるよりずっといい。
何より、子どもの進学に間に合ったことが一番うれしかった。
共有名義のまま放置していたら、ずっとモヤモヤし続けていたと思います。



この2つの事例からわかるのは、「共有者と話し合いができるかどうか」で最適な方法が変わるということ。
そして、どちらの方法でも「早めに専門家に相談する」ことが、結果的に時間もお金も節約するポイントだということです。
共有名義不動産の売却に関するQ&A
まとめ


この記事では、共有名義の不動産売却について、方法の選び方から手続きの流れ、税金、トラブル対策まで幅広く解説してきました。
実際に売却を経験された方からは「もっと早く動けばよかった」「専門家に相談したら意外とスムーズだった」という声をいただくことがとても多いです。
最後に、大切なポイントを3つに絞っておさらいします。
- 共有名義の不動産も、正しい手順を踏めばきちんと売却できる
- 早く動くほど、選択肢が広がる
- 一人で抱え込まず、専門家の力を借りる
もし「自分の状況ではどの方法がベストなのか分からない」という場合は、共有名義不動産の取り扱い実績がある不動産会社に無料相談をしてみましょう。
最近はオンライン面談に対応している会社も増えていますし、担当者が自宅まで訪問してくれるサービスもあります。



「まずは話を聞いてみるだけ」でも大丈夫ですので、気軽に一歩を踏み出してみてください。








