マンション総合保険とは? 共用部分の火災保険を徹底解説

マンション総合保険とは、マンション管理組合向けに作られた火災保険を指します。

マンションは「専有部分」と「共用部分」に分かれ、マンション総合保険は共用部分を補償する保険のことで、保険会社によって「マンション総合保険」や、「家庭総合保険(マンション管理組合用プラン)」など、呼び方はさまざまです。

管理組合向け火災保険の重要なポイントは以下の2点に備えられることです。

1点目は経済的な備え、2点目はマンション内で起こりえるトラブルへの備えです。

この2点を押さえて火災保険のことを知れば、「契約していて良かった!」と改めて感じることができるでしょう。

このページでは、マンション総合保険で担保される共用部分の補償についてお伝えします。

目次

マンション管理組合で火災保険をかけるとはどういうことか?

マンション管理組合で火災保険をかけるとはどういうことか?

マンションには専有部分と共用部分が存在し、共用部分の火災保険はマンション管理組合という組織として契約します。

実際に契約にあたるのは選出された理事(役員)なので、マンション総合保険を知らないでマンションに住んでいる方も珍しくありません。

マンションの専有部分と共用部分の区別

マンションの住居スペースを持っている人は区分所有者と言われます。

「専有部分」とは、分譲マンションの区分所有者となった人が所有する、生活できる部分のことを指します。

専有部分については、区分所有者が老朽化対策や水漏れ防止策を行ったり、建物部分や家財道具に火災保険を契約するといった管理を独自の判断で行うことができます。

マンションとはいえ、自分の家なので当然ですよね。

これに対してマンションの住民が共用として利用する、廊下やエレベーター、エントランスなどの部分を「共用部分」と言います。

共用部分については範囲が広いため、各個人がそれぞれ持ち分を決めて管理しても、抜けや漏れが発生しがちです。

そこで、マンションには管理組合という組織を置いて、マンションの老朽化対策や損傷箇所の修復、損害保険の管理など、建物の状態の維持・管理に関わる業務が漏れないようにしています。

マンション管理組合の存在意義

住民どうしのマンションに対する考え方の違いから、リスク対策や建物の管理のことでトラブルに発展する可能性もあります。

例えば、小さなお子さんがいるような世帯であれば、セキュリティを重視する方が多いと思います。

お子さんの安全を考えると管理費で多少のお金をかけてでも、安全面が行き届いていた方が良いと考えます。

一方で、投資用ワンルームを購入した海外のオーナーさんは、支出をできる限り減らして利益を出したいので、管理費はできる限り少ないほうが良いと、考える方もいます。

この2つの例では、マンションに対する考え方が大きく異なり、トラブルに発展するといったことが考えられます。

そこで管理の抜け漏れや住民同士のトラブルを防ぐため、国では区分所有法によりマンション管理組合をかならず設置することと、標準管理規約によりマンション管理に一定の水準を設けています。

標準管理規約の中では、共用部分の損害保険契約にマンション所有者の意思を公平的に反映させるため、マンション総合保険は管理組合による締結するように設定しています。

マンションの「共用部分」の定義

火災保険の対象となるマンション共用部分は、かなり幅広く定義されます。

建物の専有部分以外は、管理規約に特別な記載がなければ共用部分とされてます。

キュービクルやエレベーターなどの付属設備や、倉庫などの付属建物は共用部分に含まれます。

以下は、マンション共用部分の例となります。

一般的なマンション共用部分の例

  • 玄関ホール・エントランス
  • 廊下
  • 階段
  • エレベーターホール
  • エレベーター室
  • 電気室
  • 内外壁
  • 界壁
  • 床スラブ
  • バルコニー
  • ベランダ
  • 屋上テラス
  • フェンス
  • 花壇
  • 庭木
  • 自転車置場
  • 駐車場
  • 該当設備
  • ロビーのソファーや机
  • 給排水設備
  • 電気設備
  • ガス配管設備
  • 集合郵便受箱
  • 水道引込管
  • 塵芥集積所
  • 管理人室
  • 集会室
  • ゲストルーム

など

これは一般的な例で、上記以外にマンション管理規約によって共用部分と定めている財産についても、火災保険の対象に含めることができます。

マンション管理組合向け火災保険の補償内容

火災保険では火災だけでなく、台風や雪などの自然災害を受けたときの建物の修復費用など金銭的な補償をします。

たとえばマンションのゴミ置き場に放火された場合や、竜巻で飛んできたトタンで建物に傷がついたときの、外壁の修復費用などが補償対象です。

現在の火災保険では自然災害の他にも、泥棒に入られた際のリスクや、外部から物が飛来・衝突してきたときのリスクなど、建物に対する様々な被害の際に補償が受けられるようになっています。

マンション火災保険で対応できる被害事故は次のようなものが考えられます。

マンション管理組合向け火災保険の補償内容

マンションの災害等による事故の例

  • マンション内で使っていた電源から火災が発生し、廊下まで広がってしまった
  • 台風で飛んできた隣家の屋根瓦がバルコニーに衝突して部分的に壊れた
  • マンション駐車場内の付属施設にいつの間にか危害が加えられ壊されていた
  • 住民が駐車したときに機械駐車場にぶつかってしまい柱が折れてしまった
  • マンションの玄関口がいつの間にか壊されていた
  • エレベーターや機械駐車場が誤作動により故障した

上で挙げたのは被害事故の一例ですが、火災保険ではさまざまなリスクに対応し、事故の発生時にお金の負担を減らし、また資金の調達がすぐにできるように備えるのが火災保険です。

自然災害等があった場合に、保険が下りないということがないよう、火災保険の内容はよく理解した上で必要な補償や特約をかけておくべきです。

マンション管理組合用火災保険の特徴

一般的に専有部分となる住宅に対して個人でかける火災保険も、共用部分に対して管理組合でかける火災保険も、補償の内容はほぼ同じです。

マンション管理組合向け火災保険特有の部分としては、下記の3点が挙げられます。

  • 共同住宅ならではの補償
    ・・戸建ての住宅とは異なり、マンションは上下階に別世帯が住んでいます。
    トイレやお風呂の水が漏れ、下の階を水浸しにしてしまった場合などに対応できるような補償が用意されています。
  • 水災害の補償を外したプランがある
    ・・マンションは高層・鉄筋コンクリートのものが多く、水災害のリスクは戸建ての住宅と比べると低くなります。
    保険会社によって違いもありますが、水災害補償の有無を選択できる火災保険が一般的です。
  • 積立型のマンション総合保険
    ・・火災保険の補償に加えて、保険料の中で修繕積立金を準備できます。
    掛け捨て火災保険よりも積立火災保険の方がムダが少ないようにも感じますが、積立保険を分解すると、補償保険料となる掛け捨て保険料に、貯蓄保険料を上乗せし合計したものが積立火災保険となっています。
    現在は金利低下の影響もあり、元本を割れてしまうことが多いため、積立型のマンション保険の需要は少なくなっています。

火災保険の契約の際には、補償を受けるときの上限額を決め、その補償上限額によって負担する保険料も異なってきます。

補償の上限金額を保険金額といい、火災保険の場合は一般的に建物を建て直すのに必要なお金の額を設定します。

それに加えてどのような補償を受けられるようにするか、損害があった場合にいくらまで自己負担するかを決めることで、保険料が変わります。

マンション総合保険は賠償責任事故にも対応します

マンション総合保険では、自然災害や日常的なリスクに対する基本補償に加えて、マンション特有の賠償責任事故にも対応できる補償特約が用意されています。

賠償責任事故とは、第三者にケガをさせてしまったり、人の物を壊してしまったりという、人に被害を与えた場合のことです。

与えた被害に対して第三者から請求される金銭を補償するのが賠償責任保険です。

マンション共用部分の火災保険では特約として賠償責任保険を組み込むプランが用意されています。

個人賠償責任保険でマンション住民どうしのトラブル解決

個人賠償責任保険特約は、マンションの居住者のための保険です。

日常生活の中でうっかり他人に迷惑をかけてしまうことってありますよね。

人とぶつかってケガをさせてしまったり、人の物を壊してしまったり…

謝って済むのであれば問題はないですが、訴えられて被害額を請求されることもあります。

日常生活における賠償責任が発生した時に、補償が受けられるのが個人賠償責任保険です。

この保険は個人的に加入することもできますが、マンション総合保険に特約を付けることでマンションの住民全員を補償の対象とすることができます。

もちろん居住者が各々で個人賠償責任保険を契約していれば、マンション管理組合として契約しなくても問題ありません。

しかし加害者が個人賠償責任保険を掛けておらず、賠償請求額を支払えなかった場合にはトラブルが長期化します。

個人賠償責任保険の対象となる事故の例
  1. お風呂にお湯を張っていたら、蛇口を締め忘れて下の階まで漏水し、階下の住人に被害を与えた
  2. マンションの駐車場で遊んでいた子供が車に傷を付けた。車の所有者はたまたま住民のところへ遊びに来た外部の者だった
  3. 洗濯機のホースが外れてしまった。漏水をして階下の住民や廊下にまで被害が及んだ
  4. 給排水管が破裂し、隣接の居住スペースを水浸しにしてしまった。調査の結果、給排水管は専有区分のものということで、住民に賠償請求が行った。

上記が個人賠償責任特約で補償される事故の例ですが、特に給排水管の事故はマンション総合保険の保険金が支払われるケースの中でも、起きている頻度が高いです。

個人賠償責任保険の詳細は、下記のページに記載していますので併せてご覧ください。

施設賠償責任保険(特約)の付帯で来訪者の損害賠償請求にも対応

管理組合はマンション共用部分の維持管理の落ち度により、損害賠償責任を負うことがあります。

たとえばマンションの外壁タイルが剥がれて落下し、その下を通行していた人に当たってケガをしてしまったとします。

管理組合が外壁のタイルをしっかり補修していないからケガをしたんだ、と訴えられる可能性も十分あります。

またマンションの住人に被害が出るケースも多いです。

管理組合に落ち度があり、第三者に訴えられた場合に請求される、ケガの治療代や物の修復費用は、特約を付けることで補償の対象とすることができます。

一般的には施設賠償責任補償(特約)といいます。

施設賠償の事故の一例
  1. 共用部分の給配水管から水が漏れ、住民の部屋を水浸しにしてしまった
  2. 床のタイルが剥がれて飛び出しており通行人が転んで怪我をした

マンション管理組合の役員の業務に関する賠償責任保険も

マンションの管理組合では、役員(理事)を選任して実務を行います。

役員の仕事は、マンションの維持管理に関する実務ですが、修理業者を使う場合の費用や保険料などのために管理費を徴収したり、マンションの住民の方に理事会で決定したことを通知するために住民の方の一覧を持っています。

お金回りで住民が損をしたり、個人情報を漏らしてしまったりした場合には、管理組合の役員が訴えられる可能性もあります。

一例としては、マンションの居住者名簿を役員が持ち出していたことに気が付かず、居住者の情報が他人に漏れてしまった場合です。

この場合、居住者名簿を持ち出してしまった役員や理事長が訴えられる可能性がありますが、その場合に備える保険(特約)に役員賠償責任補償特約があります。

これは最近作られた特約で、理事長の過失や、管理業務に詳しくない居住者が役員になってしまった場合に備えられるように用意されています。

マンション総合保険をご検討の際は、共用部分の地震保険も検討が必要です

火災保険を契約している建物には、オプションで地震保険を付けることが出来ます。

地震保険では、地震、噴火、津波による火災等の被害を補償します。

マンション総合保険をご検討の際は、共用部分の地震保険も検討が必要です

火災保険だけでは補償されない地震の被害

たとえば同じ火による災害でも、付けっぱなしのストーブから乾かしていた洋服に燃え移った時の火事は火災保険で補償されます。

しかし地震によりストーブが倒れて火災が発生してしまった場合、火災保険の基本契約だけでは補償されません。

火災保険自体に、地震等の被害については補償できないという決まりがあるため、地震の被害に備えるためには地震保険を一緒に契約している必要があります。

また火災保険を契約していない建物に地震保険をかけることはできません。

地震のリスクだけを考えて加入しようとしても、火災保険のオプションとして用意されているため、地震保険を単体では契約できないのです。

地震保険は甚大な被害が予想されることが理由で、事故時の保険金額は火災保険よりも低く設定します。

保険料は地域によって高い・安いが変わりますが、近年はほとんどの地域で大きな地震が発生するリスクが高まっています。

大地震で大きな被害を受けたときに備えて、地震保険は付帯しておくべきです。

マンション総合保険は値上がり傾向にある

マンション総合保険は、保険料が値上がりの傾向にあります。

保険料値上がりの大きな原因は、自然災害が多く発生していることと、マンションの水漏れ事故が多くなっていることです。

マンション総合保険に限らず、火災保険料は増加傾向

損害保険の保険料は、純保険料と付加保険料というものを合計したものです。

純保険料は保険会社が保険金を支払うための準備金として、保険契約者から徴収します。

付加保険料は保険会社の運営などに充てられ、付加保険料に関しては保険会社が自由に決めて良いことになっています。

純保険料に関しては、保険会社が回収する保険料と、事故時に保険会社が支払う保険金は同額にしなければなりません。(収支相等の原則といいます。)

つまり保険会社から保険金の支払いが多くなると、その分保険会社が徴収する保険料も上がります。

収支相等の原則を守るために、損害保険料率算出機構という機関が参考純率というものを出し、保険会社は参考純率をもとに保険料を出します。

参考純率は毎年算出され検証した上で、改定が必要かどうか判断します。

実際に2018年に参考純率の改定が発表され、2019年は損害保険会社各社が火災保険料の引き上げを予定しています。

2018年に損害保険料率算出機構が発表した参考純率の改定は、自然災害の増加や水濡れ損害の増加を背景に、全体で平均5.5%保険料率を上げるというものでした。

自然災害の増加の面では特に保険金の支払額が多かったものとしては、以下の2点が挙げられています。

  • 2014年に関東甲信地方を襲った大雪・・・保険金支払額:約2,300億円
  • 2015年に九州に被害をもたらした台風15号・・・保険金支払額:約1,530億円

最近でもゲリラ豪雨や台風などの自然災害が増えてきており、今後も火災保険は全体的に増額するものと思われます。

マンション共用部分は老朽化によるリスクが大きい

水道管の凍結や破裂などを原因とする水濡れ損害に関しては、2006年に保険会社全体が支払った保険金は約50億円で2015年の保険金は230億円と、10年間で約180億円も増加しています。

マンション共用部分でも給排水管の水濡れ損害は多く発生しており、給排水管の原因調査費用や賠償責任保険も用意しているため、保険金の支払いが多くなっています。

特に築20年以上のマンションは、老朽化により水道管が壊れるリスクが高いとされます。

全体的に火災保険料は値上がりしていますが、築年数が古いマンションほど保険料が高くなっている保険会社が多いです。

保険会社によっては、マンションのメンテナンスや維持管理の状況によってマンション火災保険に割引が適用でき、火災保険料を抑えられるところもあります。

割引の適用や特約など保険会社による違いは、複数の保険会社を取り扱っている代理店で確認できます。

マンション総合保険を見直したいときには、下記の記事をご参考下さい。

マンション総合保険のまとめ

マンションを管理する上で、自然災害などによる被害発生時に早急に修復することや、手出しのお金がないようにすることが大切です。

マンション総合保険の特約には住民間のトラブル解決や、管理組合が訴えられたときの対処としての賠償責任補償特約、水道管破裂時等の原因調査費用など、マンション管理組合にとっては重要な補償が備わっています。

火災保険の付帯漏れや、補償内容が足りていなかった場合には、修復費用をマンション内で集める必要が出てきたり、トラブルの解決が遅れたりします。

マンションの管理費を適切に運用するためにも、マンションのリスクを把握して合理的な保険加入を心がけるとともに、複数の保険会社に見積もりを依頼してみたり、保険会社による内容の違いを把握することも大切です。

目次