こんにちは。保険相談ラボです。
2021年1月1日から火災保険料が値上げになるという報道を見かけた方も多いのではないかと思います。
この火災保険料の値上げは、戸建て住宅、マンション、企業の事務所や工場なども対象となっており、もちろん、マンション管理組合が加入するマンション総合保険も値上げとなります。
弊社にもこのようなご相談が寄せられています。


今回は、
- マンション総合保険は2021年1月にどれだけ値上げになるのか
- マンション総合保険の値上げの理由
- 値上げに対する具体的な5つの対策方法
をお伝えしていきます。
マンション総合保険では、更新後の保険料が2倍~3倍の値上げになったというご相談は非常に多いので、最後まで読んでいただき、参考にしていただければと思います。
マンション総合保険は2021年1月にどれだけ値上げになるのか?
保険料値上げの要素は主に4つあります。
2021年1月以降に更新を迎える、マンション総合保険ではこれら全ての影響を受けます。
- 2021年1月の火災保険料率改定
- 築年数の経過
- 過去の事故件数
- 2021年1月の地震保険料の改定
ひとつひとつご紹介します。
マンション総合保険の2021年1月改定前後の保険料比較
まず2021年1月の火災保険料率改定が、どれだけの値上げになるのかを検証してみました。
具体的な保険会社名はお伝えできませんが、3つの保険会社で保険料を比較しました。

2020年12月に保険を開始した場合と、2021年1月に保険を開始した場合で、補償内容は同じ条件で保険料を比較しています。
7%~24%の値上げという結果になりました。
仮に20%の値上げでも、500万円の保険料が600万円になり、100万円の値上げとなります。
かなりインパクトがあるのではないかと思います。
ただし、マンション総合保険の場合は、この後ご案内する、築年数や過去の事故の件数を加味する必要があります。
マンション総合保険の保険料は建物の建築年数も影響
マンション総合保険は一般的な火災保険と異なり、築年数別料率を採用しています。
全く同じ大きさのマンションであっても、築年数が経過しているマンションの方が保険料が高くなる仕組みになっています。

この図は、ある保険会社で築年数によって、保険料がどれだけ変化するかを検証した比較表になります。保険会社やマンションによっても異なります。
また、5年経過ごとに保険料が変わる仕組みの保険会社もあれば、1年経過ごとに保険料が変わる仕組みの保険会社もあります。
築20年では築5年と比べ+105%と2倍の保険料になることが分かります。
築35年になると築5年と比べ、+182%と3倍の保険料にせまる勢いです。
築年数が経過すると、給排水管の老朽化によって、漏水事故が多発する傾向にあります。
このことが、築年数別料率に影響しており、築年数が経過している程、保険料が高くなるという考え方になります。
過去の事故件数も保険料に影響
2019年10月以降に更新を迎える、マンション総合保険は、過去の事故件数も保険料に影響してきます。
次回の保険開始日(保険始期日)から6ヶ月さかのぼった、2年間もしくは保険会社によって1年間の事故の件数によって、保険料が決定される仕組みです。

保険会社によって、カウント期間(保険上は成績計算期間と呼びます。)は異なっていますので、A保険会社では1件の事故でも、B保険会社では0件の事故ということも起こりえます。
当然のことながら、事故件数0件の方が、保険料は安くなり、事故件数が多くなるほど、保険料は高くなっていきます。
ここでいう、事故の件数は、事故のカウント期間内に保険金を受け取った事故が何件あるか、という点に着目しています。
事故のカウント期間内に発生した事故件数ではありませんので、間違えのないように保険代理店に報告しましょう。
具体的に事例を上げてみました。
保険更新日 2020年12月1日
事故件数のカウント期間 2018年6月1日~2020年6月1日
※保険会社によってカウント期間は異なります。上記は例示となります。
- 事故日 2018年4月1日 保険金受取日 2018年5月30日
- 事故日 2018年5月1日 保険金受取日 2018年7月1日
- 事故日 2019年10月1日 保険金受取日 2020年1月1日
- 事故日 2020年5月1日 保険金受取日 2020年8月1日
1は、保険金受取日がカウント期間に含まれていないので、事故にカウントしません。
2は、事故日はカウント期間内に含まれていませんが、保険金受取日がカウント期間に含まれているので、事故扱い。
3は、保険金受取日がカウント期間に含まれているので、事故扱い。
4は、事故件数のカウント期間内に発生した事故ですが、保険金受取日はカウント期間に含まれていないので、事故にカウントしません。
この例では、2と3が事故扱いとなり、事故2件として取り扱います。
上記で計算した事故件数を、マンション総戸数で割り込み、1戸室あたりの事故件数を計算していきます。
仮に、事故2件、総戸数100戸とした場合、1戸室あたりの事故件数は0.02件となります。
ほとんどの保険会社では、1戸室あたりの事故件数によって、保険料の割引を行っていますので、管理会社などに事故情報を正確に確認してみましょう。
1戸室あたりの事故件数 | 事故状況による割引率 |
---|---|
0件 | 57% |
0件超~0.02件以下 | 50% |
0.02件超~0.07件以下 | 26% |
0.07件超~0.14件 | 13% |
0.14件超 | 割引なし |
ただし、保険上は、割引と呼んでいますが、事故があると逆に割増となります。
つまり、割引を受けられるという意味ではなく、実質的には、事故があると保険料が割増、値上げになると捉えた方が良いと思います。
また、事故件数は、損害保険金の大きさは関係ありません。
受け取った保険金が1万円であっても、1億円であっても、事故としては同じ1件として取り扱われます。
今後は、軽微な事故であれば、保険を使わないという選択肢を考える必要があります。
自動車保険の感覚に近いかも知れません。
地震保険料改定も2021年1月にあり、火災保険と二重の値上げも
地震保険は2017年、2019年、2021年と3回に分けて、地震保険料の値上げを行っています。
東日本大震災によって、約1兆3,203億円の保険金を支払っていることが主な理由です。

上図のように保険料は段階的に変動しているのですが、保険料が値上げの地域もあれば、値下げの地域もあります。
徳島県、高知県など南海地震が予想される地域、東京都、神奈川県、千葉県などの首都直下地震が予想される地域では値上げの傾向です。
一方で愛知県、三重県、和歌山県、大阪府では値下げとなります。
関東や四国の地域のマンションでは、マンション総合保険の火災保険部分だけでなく地震保険料も値上げの影響を受けることになります。
繰り返しになりますが、2021年1月以降は以下のすべての影響を受けることになります。
- 2021年1月の火災保険料率改定
- 築年数の経過
- 過去の事故件数
- 2021年1月の地震保険料の改定
マンション総合保険 値上げの理由
マンション管理組合の火災保険だけではなく、戸建て住宅、マンション、企業の事務所や工場の火災保険もすべて値上げとなっています。
なぜこのようなことになったかと言うと、昨今の災害によって保険会社は多くの保険金を支払ってきたからです。
風水害による各保険会社の支払保険金
2018年の台風21号では関西地方を中心に大きな被害が発生しました。関西空港の連絡橋にタンカーが衝突した映像でご記憶の方も多いと思います。
台風21号、24号、西日本豪雨を含め、2018年単年度で、保険会社は1兆5,695億円もの保険金を支払っています。
実は、この保険金の額は、東日本大震災で支払った保険金を超えています。
それだけ、2018年は大きな災害があったことが分かります。

給排水管の漏水事故による各保険会社の支払保険金
マンションは給排水管の老朽化によって、漏水事故が増える傾向にあります。
またマンションに限って言えば、事故の半分は漏水事故によるものです。

水濡れ損害による支払保険金の推移を見てみると、右肩上がりに増加を続けています。
直近データの2015年では230億円もの保険金を支払っています。

損害保険料率算出機構が参考純率を値上げ
2018年の台風21号やマンションの漏水事故増加を理由として、損害保険料率算出機構は、火災保険の参考純率を平均4.9%引き上げることになりました。
損害保険料率算出機構が出している参考純率を考慮し、各保険会社が個別の火災保険料率を設定しているため、4.9%以上値上げになっている保険会社もあります。
2019年の災害は参考純率に含まれていない
また、ここで注意しなければいけないのは、2019年台風19号の被害は参考純率に反映されていないという点です。
武蔵小杉のタワーマンションが浸水した映像がご記憶の方も多いかと思います。
2019年の台風19号は令和元年東日本台風とも呼ばれ、各保険会社の支払保険金は7,464億円でした。
台風19号を含んだ2019年度単年度の支払保険金は、1兆720億円でした。
2018年度の支払保険金は1兆5,695億円だったので、2018年を下回ったものの、1兆円を超える保険金を支払うほどの大きな災害でした。
この災害は参考純率に反映されていないため、マンション総合保険を含む火災保険では、今後さらなる値上げも予想されています。
2020年9月の各保険会社の決算状況
各保険会社は四半期ごとに決算を発表していますが、その資料には、E/I損害率という情報も発表しています。
E/I(アーンド・インカード)損害率=発生損害額÷既経過保険料
ざっくり言えば、保険会社が受け取った保険料に対して、支払った保険金の割合となります。

火災の損害率は、90%前後で、自動車や傷害と比べても、突出して高いことが分かります。
保険会社には、損害保険金を支払う以外にも、人件費等、事務費も当然に発生します。
このことからも、保険会社は保険料の値上げをしないと、運営ができなくなってしまうことが分かります。
下記は各保険会社の2020年度第2四半期決算(2020年11月19日発表)
東京海上日動
損保ジャパン
三井住友海上
あいおいニッセイ同和損保
マンション総合保険の値上げに対する具体的な5つの対策方法
マンション総合保険の保険料削減のための5つの方法をご案内します。
- 2021年1月前にマンション総合保険を切り替える
- 保険期間を5年にする
- 保険金額を下げる
- 免責金額を設定する
- 複数の代理店から見積もりを取る
一つずつご紹介します。
1.2021年1月前にマンション総合保険を切り替える
2021年1月1日まで時間は非常にタイトですが、まだ間に合います。
現在加入中のマンション総合保険を解約して、同日付で新しい契約をスタートさせます。
保険料は保険始期日時点での保険料率を採用しますので、2020年中に5年契約など新しい契約をスタートさせることで、2021年の料率改定を5年先延ばしにすることができます。

2.保険期間を5年にする
マンション総合保険は最大5年契約が可能です。
5年の長期契約とすることで、保険料の割引が効きます。
現在の契約が1年契約や3年契約などの場合があると思いますが、特別の理由がない限りは5年契約をオススメします。
5年分の保険料を一括では支払えないという場合には、5年契約の年払いという方法を取ることもできます。
3.保険金額を下げる
保険金額とは、マンション共用部分が被災した場合に、支払われる保険金の限度額のことです。
建物の評価が10億円のマンションに、保険金額10億円を設定されている場合があります。
このこと自体には何ら問題はありません。
ただし、鉄筋コンクリートで建築された建物に、10億円の損害が生じる事故はどういった場合に発生するのでしょうか。
全損リスクの可能性は、0とは言いませんが、限りなく0に近いのかも知れません。
例えば、建物の評価が10億円の物件に対し、60%の6億円を保険金額とするという契約方法が可能です。
保険金額を下げることで、保険料削減に繋げることができます。
4.免責金額を設定する
免責金額とは自己負担額のこといいます。
免責金額10万円など、設定することで保険料を削減することができます。
また、2019年10月以降のマンション総合保険では、ほとんどの保険会社で過去の事故実績によって、次回の保険料が決定される仕組みとなっています。
保険金の受取額が1万円であっても、1億円であっても1件カウントになります。
免責金額を設定することで、保険料を安くする効果と、次回更新時の保険料を安くする効果も得られます。
5.複数の代理店から見積もりを取る
実はこれが一番大事だと思っています。
マンション総合保険に限った話ではありませんが、同じ保険代理店で保険を更新し続けることで、競争原理が生まれにくくなります。
また、契約内容の誤りに、気付きにくくなるということもあります。
弊社にご相談を頂いた中にも、「なぜ、このような契約をしていたのだろう?」と不思議に感じてしまう保険契約もあります。
保険料が高いまま、間違った内容で保険契約を継続していると考えると、恐ろしいですよね。
マンション総合保険の値上げ対策 まとめ
いかがでしたでしょうか?
2021年1月に改定されるマンション総合保険についてまとめました。
保険料が値上げになることは変えられないので、具体的な対策方法を実行し、保険料を余計に払いすぎないようにしましょう。
- マンション総合保険を安くしたい!
- 今の保険代理店から見積書が出ているが、保険料が高すぎる!
- 今の保険代理店からは、複数の保険会社で見積書を出してくれない
- 現在加入中のマンション総合保険は適正なのか分からない!
などお困りのことがあれば、ぜひ弊社にご相談ください。