事業を承継する時の問題点とは?税制改正でのメリットとは?

事業を承継する時の問題点とは?税制改正でのメリットとは?
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中小企業が廃業する理由のうち、最も多いのは景気による悪化ではなく後継者不在という理由です。日本経済を支える中小企業が雇用や技術を喪失させてしまうことに繋がることで、事業承継問題については緊急課題としてクローズアップされています。

目次

事業承継問題が起こる理由

事業承継問題が起こる理由は、事業を承継する後継者が見つからないことで平均寿命上昇による事業承継時期の遅れで社長の在任期間が長期に渡っていることが原因です。これまでは親族内承継が9割以上だった事業承継も、近年では減少しています。

事業を引き継ぐためには、先代からの経営力を引き継ぐ後継者の育成にも時間がかかります。5~10年は必要だと考えている経営者が多く、計画的に事業承継対策に取り組まなければなりません。

後継者に承継するもの

事業承継は経営者から後継者へ事業を渡すという簡単なものではありません。自社株式や事業用資産、運転資金などの資産、そして経営資源である信用や営業秘密、ノウハウ、特許、技術、人脈、顧客情報、許可・認可など様々なものを引き継ぐ必要があります。

事業承継対策の方法

事業承継の対策は、できるだけ早い段階で計画的に実施していくことが必要です。まずは会社の現状を把握しておくことから始めます。

キャッシュフローや現状と将来の見込みなど会社概要の把握、株主や親族関係の把握、資産や負債、保証など個人財産の把握などが必要です。

その上で、後継者となる候補が親族内、社内に存在するのか、その人物の能力や適性についても確認する必要があります。

後継者が決まったら、中長期で経営計画の中に事業承継時期や対策を盛り込んだ計画を立てていきます。

法定相続人や相互の人間関係、株式保有状況、相続財産や相続税額、納税方法なども検討していく必要があります。

納税資金の確保の問題

優良な会社なら株価の評価額は高くなりますので、相続時に発生する相続税も大きくなると考えられます。

これまでは会社が自己株式を取得するという形で後継者から買い上げて、そのお金で税金を支払うといった方法が多く行われていました。しかしこれでは会社が納税資金を実質負担するという形になるため、自己資本の低下や借入金負担増という状況に繋がります。

税制改正による事業承継対策

地域経済を支える中小企業が事業活動を継続するための事業承継が円滑に行われるために、平成20年5月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立しました。

この中に相続税の課税についての措置として、非上場株式などに関わる相続税や贈与税の納税猶予制度が創設されています。

経営承継円滑化法の対象となる事業者も、既存の中小企業支援法と同様に、一部の業種について範囲が拡大されています。

事業承継税制とは?

相続税や贈与税の猶予制度を組み合わせて活用できる制度で、生前贈与による株式承継の税も軽減することができます。

さらに平成27年度税制改正で1代目の経営者が存命中に2代目が3代目に再び贈与する場合も、贈与税の納税義務が発生しない税制が拡充されています。

贈与税の納税猶予

役員を退任する経営者が、後継者に株式を一括贈与する場合、後継者が保有している株式との合計で3分の2までの株式については贈与税の全額が納税猶予可能です。

のちに先代の経営者が亡くなれば贈与税は免除になり相続税が課税されます。生前贈与された株式は相続財産に加算されるため、贈与時の時価で相続税が計算されますがこの相続税も納税猶予が適用可能です。

株式を一括贈与する時の残った3分の1の株式については、相続時の2,500万円の特別控除である精算課税制度を併用して適用させることも可能です。株価が上昇しても上昇した部分は相続財産に加算されないという部分もメリットです。

贈与税の納税猶予を受ける場合の後継者の要件

・会社の代表者である
・先代経営者の親族(6親等の血族、配偶者、3親等以内の姻族)である
・20歳以上で役員就任から3年以上経過している
・後継者と同族関係で発行決議決権株式総数の50%を超える株式を保有、かつ同族内で筆頭株主となる場合

贈与税の納税猶予を活用するときの注意点

後継者が贈与税の納税猶予を受ける場合、先代経営者は保有株式を後継者に一括贈与するなど実質的な支配権を後継者に譲ることになります。

まだ経験の浅い後継者に支配権等を譲ることに不安があることが多く、贈与してしまえば経営に関与できなくなることもあり実行段階で消極的になることも予想されます。

そのため贈与税の納税猶予を活用したい場合には、経営者の思い切った決断も大切になるでしょう。

相続税の納税猶予

経営者から後継者が相続を受け、経済産業大臣の認定を受けた会社株式を取得し経営していく場合、議決権株式の3分の2以下の部分について、評価額80%部分の相続税分が猶予されます。

ただし後継者がその後5年間は代表者を続けること、従業員の80%以上の雇用を維持すること、相続した株式は全て保有し続けることなど条件があります。

相続税の納税猶予を受ける場合の後継者の要件

・会社の代表者である
・先代経営者の親族(6親等の血族、配偶者、3親等以内の姻族)である
・後継者と同族関係で発行決議決権株式総数の50%を超える株式を保有、かつ同族内で筆頭株主となる場合

相続税の納税猶予を活用する際の注意点

相続税の納税猶予を適用した場合でも、実際には『100%-3分の2×80%』分の納税資金は必要になります。さらに猶予後に厳しい条件などもありますので、中小企業の経営環境が悪化している状況では高い経営能力が要求されることになります。

事業承継税制の最大のメリット

事業承継税制で得ることができるメリットは、同族会社の株式を事業承継者が相続する際、自社株にかかる相続税の80%、贈与税全額が免除されるということです。

雇用維持など条件をクリアする必要がありますので、承継した後で事業を縮小したいという場合には要件を満たすことができなくなる可能性があります。

条件を満たすことができなかった場合には、納税猶予の適用になりませんので本税以外に利子税も納付することになります。

負担が一気にのしかかる可能性も

事業承継税制の目的は相続税で事業継続ができなくなることを防ぐことですが、業績が悪化し従業員のリストラを実行する必要性が出てきた場合など、既に資金繰りも悪化している可能性があります。

そのような状況下の中で、経営者(株主)に猶予されていた相続税を負担することが求められることになってしまうのは負担が大きすぎるでしょう。しかも株の評価は事業がうまくいかなくなった時の株価ではなく、相続が発生した時の株価で税額計算されます。

この制度の納税猶予は事業を承継できて完全なメリットを受けることができますが、経営が破綻すれば株も無価値となり相続税は発生しないのに対し、経営を続けようと規模の縮小を選択すれば納税猶予が終了してしまいますので注意が必要です。
納税資金を事前に準備しておくために

事業承継には様々な問題が取り巻いていますが、中でも納税猶予など税制に関する問題については、事業承継税制のメリット部分だけを見ずに検討する必要があります。

先代経営者が後継者に株式や経営権を譲るといったことに対して、思い切った決断ができるかもポイントとなりますし、贈与税の納税猶予が適用された後の要件も厳しいと言えます。

そして後継者についても、相続税の納税猶予を適用したとしても高額と言える納税資金を要することが予想され、実際に納税猶予される適用要件も厳しいと言えます。

いざ納税資金を確保する時に準備ができないと言う場合、有価証券や不動産を売却することになっては意味がありませんので、生命保険で事業承継対策を検討することも視野に入れると良いでしょう。

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